ニュースリリース

NEWS RELEASE

2012(H24)年度 第30回研究助成金受領者を決定し、贈呈式を開催しました。

 

平成24年度 第30回研究助成金受領者を決定し、贈呈式を開催しました。
「特定研究助成」は、「機械が人間に合わせる人間の負担がないヒューマン・マシン・インタフェース技術」で受賞

2013.03.07
公益財団法人 矢崎科学技術振興記念財団

 

公益財団法人矢崎科学技術振興記念財団(理事長:尾崎 護、所在地:東京都港区)は平成24年度の「研究助成金」受領者15名「国際交流援助」受領者16名「矢崎学術賞」受賞者2名を決定しました。

 

昭和58年以来、科学技術の推進を目的として「研究助成」事業を行ってまいり、当年度で30回目の助成となりました。「エネルギー」「新材料」「情報」の3分野を対象領域とし、研究の独創性に重点を置いて選考されています。「一般研究助成」(助成金200万円)と、特に若手研究者を対象とした「奨励研究助成」(同100万円)、および平成12年から当財団が特定したテーマにふさわしい研究を助成する「特定研究助成」(同1,000万円)を行っています。また、国際的な学会で論文や共同研究発表をする際の渡航費を「国際交流援助」事業で助成しています。

 

今年度は、「一般研究助成」には88件の応募があり、審査の結果、光電子工学の分野でグラフェンナノ構造を用いた超高感度電磁波検出器の実現をめざす研究の 町田 友樹(マチダ トモキ)東京大学生産技術研究所准教授はじめ5名に決定しました。

 

「奨励研究助成」は、54件の応募の中から、誘電率などを制御した人工物質(メタマテリアル)を利用した新たな光通信受信器の研究の 雨宮 智宏(アメミヤ トモヒロ)東京工業大学量子ナノエレクトロニクス研究センター助教はじめ9名が決定されました。

 

「特定研究助成」は、領域a「機械が人間に合わせる人間の負担がないヒューマン・マシン・インタフェース技術」および、領域b「食糧生産力を高度化し、かつ環境と調和する持続型技術」の特定されたテーマに計21件の応募があり、領域aで応募され、被験者の負担を軽減する非接触のモバイル型生体磁気センサモジュールの研究の 内山 剛(ウチヤマ ツヨシ)名古屋大学大学院工学研究科准教授に決定しました。
 

また、「矢崎学術賞」は、過去に当財団から研究助成を受けた研究者の中から、優れた成果をあげられた研究者に贈っており、功績賞は、石原 一彰(イシハラ カズアキ)名古屋大学大学院工学研究科教授に、奨励賞は、高橋 和貴(タカハシ カズノリ)岩手大学工学部電気電子・情報システム工学科教授に決定しました。

贈呈式は、3月7日午前11時30分より、東京都港区の東京プリンスホテルにて開催しました。

 
「研究助成」「国際交流援助」「矢崎学術賞」の各対象者の詳細は、研究助成・受領者をご覧ください。

尚、研究助成を受領した各研究の紹介文をご覧ください。

 

「特定研究助成」受領者の研究概要

生体情報を非接触で計測するためのモバイル型超高感度磁気センサモジュールの開発

名古屋大学大学院工学研究科 内山 剛

 

[背景] 生体情報を用いて人間の体調や気分を認識する技術があるが、従来の脳波計等による計測方法では皮膚に直接電極を張り付ける必要があり、被験者に負担を与える要因となっていた。また磁気センサを用いた非接触での生体磁気信号の計測が考えられてきたが、生体磁気信号は周辺磁気ノイズ(地磁気、環境磁気雑音等)と比較してとても微小であり、現在広く用いられている超伝導量子干渉磁力計(SQUID)による測定では電磁シールドや冷却装置等の大規模な測定機器が必要であり、簡便な測定が困難となっていた。

 

[研究内容] 本研究では、アモルファス磁性ワイヤを用いたマイクロ磁気センサを用いて、特殊な測定環境を必要としない通常環境下での微小磁界を計測するセンサモジュールを開発し、非接触での生体磁気信号の検出および検出信号を用いた被験者の体調、気分などの状態の検出を目的とする。センサモジュール開発のために必要となる磁気センサの測定感度向上を目指し、素子パラメータの最適化及び周辺システムの高度化を行う。さらにモジュール化に向けて必要となるセンサ周辺回路の小型化を目指し、センサヘッド基板の精密加工と集積加工に最適な回路設計及び基板化を行う。

 

[モバイルヘルスケア] 下図には、本研究の成果の活用が期待される分野を示す。すなわち、モバイル型超高感度磁気センサモジュールにより、被験者に負担を与えず容易に生体情報の測定が可能になり、日常生活内で使える生体情報測定器具として、セルラーネットワークとインターネットを介して家庭と専門医師を繋ぐことにより、きめ細やかなヘルスケアサービスの実現が期待できる。日常的に測定した生体情報を用いた健康管理としては、例えば、脳波を用いてアルツハイマー病などの認知症のケアに簡便に利用できる可能性がある。さらに、日常生活中の心臓の活動を長時間にわたってモニタリングすることで、朝晩の比較的心身安静時に出やすい一過性の不整脈や、日中活動中に起こりやすい虚血性心疾患などの症状の検出にも有効と考えられる。また、センサモジュール化により、任意の複数個所の生体情報検出が容易となれば。ヒューマン・マシン・インタフェース分野への応用が拡がる。

 

 

(2013/03/07)