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2017/12/06

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研究者の詳細

氏名 研究キーワード
後藤 太一
ゴトウタイチ
Qスイッチ,磁気光学効果,磁気ドメイン,パルス,レーザー加工
ホームページ http://www.tut.ac.jp/university/faculty/ee/740.html
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2016年度 奨励研究助成 エネルギー 豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 電気・電子系 PDF PDF
研究題名 kW級スピン変調型Qスイッチレーザーの開発

訪問記

最終更新日 : 2017/12/07

訪問日:2017/11/24
訪問時の所属機関 豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 訪問時の役職 助教

研究紹介文にもとづき、助成対象となったご研究の詳細を伺いました(図1)。以下は主な質疑応答です。

ご研究を始めた契機はなんですか?
レーザーと呼ばれる、発光素子があります。近年照明や、街中のイルミネーションなど、目にする機会の増えたLEDもその一種です。kWを超える出力の高出力レーザーは、加工組立産業や自動車産業、宇宙産業など、応用される分野が広いのが特徴です。小型化ができれば、より広い応用が期待されますが、出力とのトレードオフの関係にあります。これまで出力向上手段として電気と光、音と光といった組み合わせが検討されてきました。理論的には磁力と光の組み合わせも使えるのですが、実用化はされておらず、学生時代に学んだ量子力学の考えを適用すれば、小型高出力レーザーが実現できるのではないかと考え始めたのがきっかけです。

ご研究の独創性を改めてお伺いします
レーザーの高出力化にはQスイッチングという手法を使います。発光しているレーザー素子と出力レンズの間に光を高速に透過、遮蔽するQスイッチと呼ばれる素子を挿入し、出力を上げます。これまで、EO(電気光学効果)、AO(音響光学効果)が応用され、一部実用化されていますが、もう一つの光変調方式であるMO(磁気光学効果)は用いられていませんでした。私の研究では、MOを用いたQスイッチをすでに実現しており、独創的であるといえます。また、MO膜は素子サイズを他の方式(EO素子、AO素子)より100倍小さくすることが可能で、原理上小型かつより高出力なレーザーが実現できる可能性があります。原理的にMO膜が優れている点も独創性の高さとしてアピールできる点であると考えています。

研究者を志したきっかけを教えてください
学生時代の恩師の存在が大きい。恩師の人柄に触発され、それまで興味のなかった量子力学などを勉強し始め、磁気光学効果を応用するアイディアがうまれました。研究に没頭した結果、ユニークな成果を出すことができ、現在に至ります。

研究活動の面白さは何ですか?
課題を解決するための手段・手法がたくさんあること、でしょうか。すべての課題を一人で解かなくても、人に聞くことができます。時には教えて、時には教えられて。たくさんある解き方をロールプレイングしながらアプローチを絞り込むのは非常に楽しいです。

後進の方に伝えたいことは何ですか?
将来進む道を早く決めることも面白いということを伝えたいと思います。私は中学を卒業する時点でエンジニアになると決めていました。モノづくりやロボット、プログラミングなど、早いタイミングで自分の進む道を決めて、その領域で世界を広げると迷いが少なくストレスがありません。世の中には多くの選択肢を残しながら進む方法もありますが、先に道を決めてしまう方法もあり、それも面白いと思います。

後記
エンジニアリングあるあるネタの話をしてくれました。モノづくりというと母親からは、『冷蔵庫は直せるのか』、『電子レンジは直せるのか』といった質問を受け、困ってしまうそうですが、研究のテーマとして、母親が感心してくれるようなものを作りたいと思っているそうです。生活の役に立ってこそ技術が活きる。そういったことを先生のお話から伺うことができました。後藤太一先生のご研究が早期に実現し、生活の場で活用されることを期待しています。

(技術部長 鳥越昭彦)

著作文献紹介
  • T. Goto, R. Morimoto, J. W. Pritchard, M. Mina, H. Takagi, Y. Nakamura, P. B. Lim, T. Taira, and M. Inoue, Opt. Express 24, 17635 (2016).
  • R. Morimoto, T. Goto, J. Pritchard, H. Takagi, Y. Nakamura, P. B. Lim, H. Uchida, M. Mina, T. Taira, and M. Inoue, Sci. Rep. 6, 38679 (2016).