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研究者の詳細

氏名 研究キーワード
村井 俊介
ムライシュンスケ
表面プラズモンポラリトン、プラズモニクス、窒化チタン、ナノ光源
ホームページ http://dipole7.kuic.kyoto-u.ac.jp/
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2013年度 奨励研究助成 新材料 京都大学大学院 工学研究科・材料化学専攻 PDF PDF
研究題名 貴金属に替わるプラズモニクス材料の開発

訪問記

最終更新日 : 2017/06/12

訪問日:2014/06/26
訪問時の所属機関 京都大学 大学院工学研究科 訪問時の役職 助教

京都大学・村井先生を訪ねて
 当日は専門外の我々のために基礎から始まる分かりやすい資料を事前に用意、プロジェクタでご説明いただきました。我々の質問にも丁寧に対応いただき、原理などの基本的な説明に長時間を費やしていただきました。
 今回の助成内容がプラズモニクス材料の開発でしたので、先生の所属する研究室でのスピントロニクスの研究との関係をお聞きした所、元々窯業などのセラミックスの研究室ですが、高品質な酸化物を扱い始め、その製造方法としてパルスレーザー堆積(PLD)法を使って、単結晶薄膜を作っているとのことです。このPLD法による単結晶薄膜をスピントロニクス、プラズモニクス材料に展開しているとのことです。
 金属表面の自由電子の振動の位相に、入射する光の振動の位相を合わせることで、界面で両者が結合した波が形成されます。それが界面を伝わる波となり、その波を表面プラズモンポラリトン(SPP)と呼び、その波を使った技術をプラズモニクスと呼ぶそうです。SPPは界面に局在、伝搬、界面に閉じ込められることから、光をSPPに変換することで微小な光ナノ回路が実現できます。また、入射光に比し電子の振動の波長が短いことから、空気中より電場密度が高くなり強い電場の影響により、少量の分子の識別とか分子の光励起を増強できると言います。そのことから生体分子の識別、光学素子、光ナノ回路を使った情報通信への応用が期待されています。
 プラズモニクス材料の特性には、材料のキャリア密度と移動度が関係するとのことです。表面プラズモンが起こる波長領域は自由電子の密度で決まり、プラズモニクス材料に金が使われるのは、その電子密度が可視光領域に対応しているからとのことです。高い移動度を得るには導電性の材料で理想的には単結晶が必要です。そこで導電性窒化物、導電性酸化物として、高品質なTiN、ITO単結晶薄膜を格子定数の近い基板上にPLD法により作製し、評価することでプラズモニクス材料としての限界を知ることが出来るとの考えです。キャリア密度は自由電子の数で決まり、電子数が多いと短波長側になり、酸化物だとまだ可視域が実現していないのが現状です。
 先生は従来の金・銀に代替する材料として、現在の半導体プロセスと親和性があり、損失の少なく、誘電率が調整できる材料としてTiN(可視域)、ITO(赤外域)を選択しました。光学応答はその物質の誘電率によって決まります。金属の誘電率はドルーデの自由電子モデルで表され、自由電子の密度、移動度などで決まる項と、バンド間遷移による項の和で表されるとのことです。すなわち酸化物などの貴金属以外のプラズモニクス材料の特性は、利用する波長領域を限定するキャリア密度、移動度、そしてバンド間遷移による損失の3因子に左右されます。
 その結果、例えばTiNではエリプソメトリーによる光学定数から誘電率の算出などの結果、従来の製造法と比較して、より短波長側で金属(負の誘電率)となり、かつ低損失の高品質な膜を得ることができました。
 今後は光ではなく電流駆動も考えたいとのこと、更なる意欲的な取り組みを期待したいと思います。(2014年6月26日訪問、技術参与・飯塚)

著作文献紹介
  • ・R. Yasuhara, S. Murai, K. Fujita, and K. Tanaka, Atomically Smooth and Single Crystalline Indium Tin Oxide Thin Film with Low Optical Loss, Phys. Status Solidi C 9 (2012) 2533-2536.

    ・G. Lozano, D. J. Louwers, S. R.K. Rodriguez, S. Murai, O. T.A. Jansen, M. A. Verschuuren, and J. Gomez Rivas, "Plasmonics for solid-state lighting: enhanced excitation and directional emission of highly efficient light sources", Light: Science & Applications (2013) 2 e66.

    ・S. Murai, M. A. Verschuuren, G. Lozano, G. Pirruccio, S. R. K. Rodriguez, and J. G. Rivas,
    Hybrid Plasmonic-Photonic Modes in Diffractive Arrays of Nanoparticles Coupled to Light-Emitting Optical Waveguides, Opt. Express, 21 (2013) 4250-4262.