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2021/02/09

Topics研究室訪問記が追記されました。

研究者の詳細

氏名 研究キーワード
李 洪譜
リコウフ
軌道角運動量(OAM)モード、螺旋状ファイバ回折格子(HLPG)、波長多重(WDM)方式、OAMモード多重方式、OAMモードの多重デバイス、OAMモード・波長多重光通信システム
ホームページ http://ars.eng.shizuoka.ac.jp/~li01/
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2019年度 一般研究助成 情報 静岡大学 工学部機械工学科 PDF
研究題名 波長及びOAMモード多重光通信のための多チャンネル螺旋状ファイバ回折格子の開発

訪問記

最終更新日 : 2021/02/09

訪問日:2021/02/04
訪問時の所属機関 静岡大学 工学部機械工学科 訪問時の役職 教授

 研究紹介文にもとづき、助成対象となったご研究の詳細を伺いました(図1)。以下は主な質疑応答です。

ご研究を始めた契機はなんですか?
 1台のスマートフォンでひと月にやり取りされる情報量はあと数年で2倍になるといわれています。最新の5G通信では、基地局を結ぶネットワークで光ファイバが使われており、通信を陰で支えています。増え続ける情報量に対し、光ファイバの中を通る光信号の数を増やす様々な手段の提案や実用化がなされてきました。光の周波数を増やす波長多重(WDM)方式、波の種類(チャネル)を増やすOAMモード多重方式、1本の光ファイバの中に光の通り道を複数設ける空間分割多重方式などがあります。私は長年培ってきた光ファイバの作製技術を活かしたモード多重方式の通信システム実現を考え、本研究を始めました。

ご研究の独創性を改めてお伺いします
 モード多重方式通信システムの概要を図2に示します。異なるモード(チャネル)の通信を単一ファイバで行うことができれば、一本のファイバをモード数と同じ本数のファイバとして利用可能です。原理的に大容量化に適した通信方式ですが、モード変換器の大きさなどがネックとなり実用化が難しいとされています。そこで、私はらせん状ファイバ回折格子(図3)を用い、光ファイバでモード変換を行う方式を考案しました。らせん状ファイバ回折格子でモード変換を行い、通信に成功している研究例はなく、私の研究のユニークな点であると言えます。

実用化されると暮らしはどう変わりますか?
 本研究が実用化されれば、一本の光ファイバを通る光信号の数を格段に増やすことができ、より快適な通信環境の実現につながります。また、本研究で提案しているファイバ(らせん状ファイバ回折格子)は、渦状ビーム(多波長光渦ビーム)発生器として化学・バイオ円二色性(キラリティー)センサー、レーザ加工等への応用も可能であり、医薬や製造等分野への活用も期待されます。

研究者を志したきっかけを教えてください
 中学生の時に、レーザ科学者に関するSF映画を見て、レーザに従事している研究者がかっこいい、同じ仕事をしたいと思ったのがきっかけです。思いが高じて、1981年当時、中国でレーザコースを有する唯一の大学、華中工学院(現華中科技大学)光学学科に進学しました。それ以来、光ファイバデバイス、特に光ファイバ回折格子に関する研究及びその応用に携わり今に至ります。

研究活動の面白さは何ですか?
 一言で言うと、研究の「自由性」だと思います。即ち、自分のやりたいことや、誰もまだやっていないこと、世界で未知のことを研究出来ることが面白く、研究の楽しさだと感じています。

後進の方に伝えたいことは何ですか?
 アメリカ合衆国第16代大統領リンカーンの名言「意志あるところに道は開ける」(Where there is a will, there is a way) を伝えたいと思います。研究も同じです。失敗の中から新しいことが生まれます。どんなに困難な道でも、一生懸命に取り組むことが大切です。失敗しても、それを続けてやり遂げる意志さえあれば必ず成功の道は開けると思います。

後記
 普段の生活では光ファイバの存在を意識することはほとんどありません。しかし日々増え続ける情報量に対し限界が近づいているというお話を伺うと、生活への影響を考えざるを得ません。ご研究の実用化にはまだいくつかハードルが残っているということでしたが、一つずつ解決されているということで、先生がおっしゃった「意志あるところに道は開ける」という言葉を思い返しました。先生のご研究成果の一日も早い実用化を楽しみにしています。

(技術部長 鳥越昭彦)

著作文献紹介
  • H. Zhao, P. Wang, T. Yamakawa, and H. Li, “All-fiber second-order orbital angular momentum generator based on a single-helix helical fiber grating,” Opt. Lett., Vol. 44, No. 21, pp. 5370-5373 (2019).
  • C. Zhu, P. Wang, H. Zhao, S. Ishikami, R. Mizushima, and H. Li, “DC-sampled helical long-period fiber grating and its application to the multichannel OAM generator,” IEEE Photon. Technol. Lett., Vol. 31, No.17, pp. 1445-1448 (2019).
  • C. Zhu, S. Ishikami, P. Wang, H. Zhao, and H. Li, “Optimal design and fabrication of multichannel helical long-period fiber gratings based on phase-only sampling method,” Opt. Express, Vol. 27, No. 3, pp. 2281-2291 (2019).
  • H. Zhao and H. Li, “Enhancement of high-order azimuthal mode couplings in a single-helix helical long-period fiber grating by using the phase-sampling method,” IEEE Photon. Technol. Lett., Vol. 30, No. 7, pp. 630-633 (2018).
  • Peng Wang and H. Li, “Helical long-period grating formed in a thinned fiber and its application to refractometric sensor,” Applied Optics, Vol. 55, No. 6, pp. 1430-1434 (2016).