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2022/01/14

Topics研究室訪問記が追記されました。

研究者の詳細

氏名 研究キーワード
石割 文崇
イシワリフミタカ
高分子、高分子合成、特殊構造高分子、ラダーポリマー、二次元高分子
ホームページ https://sites.google.com/view/fishiwari/home?authuser=0
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2020年度 奨励研究助成 新材料 大阪大学 大学院工学研究科 PDF
研究題名 表裏を持つ二面性二次元高分子ナノシートの創製

訪問記

最終更新日 : 2022/01/16

訪問日:2021/11/10
訪問時の所属機関 大阪大学 大学院工学研究科 訪問時の役職 講師

リモートインタビュー(図1)で、助成研究内容や研究の考え方などについてお伺いしました。

先生のバーチャル背景(図1)が楽しいイラストになっていますね
この後でご説明する「ラダーポリマー」の動きを、猫を使って表そうとしたときに思いついたイラストです。実際にドイツの科学雑誌の表紙にもなっています(図2)。学生さんが下書きしてから私が仕上げるというスタイルで書いています。見た目は少しふざけた感じかもしれませんが、内容は大真面目な絵なんですよ。

まず、これまでの研究について教えてください
学生時代には、「ロタキサン」という分子の研究をしていました。リングにひもが通っている様な構造の面白い物質で、何に使えるかを考えながら自由な発想で研究をさせてもらっていました。
その後、現在も継続している研究で「ラダーポリマー」という高分子に興味を持って進めています。通常のポリマーは、モノマー鎖の両端が1本の手で結びついて高分子になっていますが(図3a)、ラダーポリマーは2本の手で結合しているので、名前の通り梯子の様な形をしたポリマー(図3b)になります。結合する手が二つあるため、ひとつのモノマーに二つのモノマーが結合して鎖が分岐してしまう場合もあるので、合成するのが難しいポリマーです。そのため、昔から知られている物質ではあるのですが作られた種類は限定的で、まだまだ研究余地がかなり残されているポリマーだと思います。
蛇のおもちゃでこんな動き(図3c)をするものがあったかと思いますが、最初の研究ではこの様に分子の動きが二次元的に制限されたポリマーができたら面白いと思ってスタートしました。ジアザシクロオクタン(DACO、図3d)が連結部分になるのですが、実はこのポリマーの合成法は燃料電池のアニオン交換膜を作る研究の中で偶然発見できたものでした。他の研究でねらっていたものが思いがけず出来てきたので、その時はとてもうれしかったですね。更に、「Synfacts」という新奇な反応を紹介する雑誌に論文を出したところ「Mission Accomplished: Synthesis of ‘Flexible’ Ladder Polymers(任務完了:柔軟なラダーポリマーの合成)」と紹介してもらい、これもうれしい驚きでした。

このラダーポリマーは今回の助成研究の「二面性」にもつながっているのですか
通常のポリマーは一つの結合の手でつながっているのでいわば「ひも状物質」ですが、ラダーポリマーは「テープ状物質」ということになります。テープには表と裏があるので、表と裏が区別できるポリマーを作ってみたら面白いんじゃないか、ということで「二面性」を持ったラダーポリマーの合成を着想しました。
2種類のポリマー鎖をもった高分子でよく知られたものに「ブロックコポリマー」というものがあります。これは2種の異なる高分子A鎖とB鎖が点で直列に接合したポリマーで、自己集合化やミセル形成などの特異な性質で最近の高分子化学において基礎と応用の両面で今注目されているポリマーです。一方、「二面性ラダーポリマー」は異なる高分子が面で接合してA面とB面を持ったポリマーということになります。私の中では従来のブロックコポリマーは「直列型ブロックコポリマー」、「二面性ラダーポリマー」は「並列型ブロックコポリマー」と分類できると考えていて、「二面性ポリマー」が新種のブロックコポリマーと位置づけられる様になれば最高だと思い、今取り組んでいるものです。
そして、二面性ラダーポリマーを更に発展させたのが、今回の助成研究テーマ「表裏を持つ二面性二次元高分子ナノシート」です。ラダーポリマーではモノマーの両端を真直ぐつなげて「テープ状」になりますが、3方向に結合点を持たせれば面状に広がりのある「シート状」ポリマーになります(紹介文の図1b)。近年、様々な二次元物質が研究されていますが表と裏を持つものはまだ存在しないので、これができればとても面白い物質になると考えて申請させていただきました。

応用としてはどの様なことが考えられますか
例えば、片面に金属基板に吸着しやすい官能基を付けて、もう片方の面には基板に付与したい性質持たせることで、金属表面の修飾材になります。また、片面をナノ粒子やナノチューブなどと親和性の高い性質にして、これらの物質をひとつずつナノレベルで包み込むことができればマトリックス樹脂と親和性の高いナノフィラーとして機能すると考えられます。
有機物質なのでシートに穴の開いた構造も設計でき、物質輸送における整流特性なども出せのではないかとも考えています。これまでに表と裏がある二次元物質というのは存在しなかったので、どんな性質が出せるのかについては、未知の領域です。

研究の中で面白さや醍醐味を感じるのはどんなときですか
私は少し変わっているかもしれませんが、面白さを感じるのは研究としてやりたいことを「思いついたとき」です。もちろん、目標が達成できたときはうれしいですが、達成すると少し自分の中で考える余裕ができて、次に目指すものが見えてきます。そのときが、とても楽しいと感じるときですね。

大学で研究者になろうと思ったのはいつですか
経済的にそれほど余裕があったわけではなかったこともあり、当初大学院に行くかどうかは迷っていました。しかし、大学を3年間で卒業できることになり、更に指導教官から「修士博士一貫コースに入れば1年短縮して博士が取れて、修士のときから奨学金がもらえるよ」と勧められて進学することにしました。この一貫コースでは1年短縮するためには海外留学が条件だったのですが、そこで留学したのがMIT(マサチューセッツ工科大学)でした。世界中から集まった学生が頑張っている環境で感じたのは、「今までよくわからなかったけど、自分も全然負けてないな」という感覚です。この留学経験で「やっぱり大学で研究を続けたい」と思うようになりました。MITに行っていなかったら、おそらくどこかの企業に就職していたと思います。

学生さんを指導する上で、大切にされていることは
私たちの研究では「新しい分子」を作ることが目的ですが、作ったものが「新しい分子」だと証明するのは結構大変なことなのです。生成物の組成・構造をあらゆる角度から分析して、分析情報が「過不足なく」その構造を指し示していることを明らかにする必要があります。最近の研究では、一部の分析ピークを無視して論じていたりすることが見受けられますが、すべてのデータを無視せず「過不足なく」説明できることが重要です。学生たちには、このことを徹底して指導しています。
ただ、やっぱり一番大切なのは、「今、楽しく研究できているか?」っていうことですね。

後記
石割先生は話の中で、「~が面白いと思って・・・」「・・・はうれしかったです」など、研究が面白さ・楽しさをたくさん散りばめながら、とても気さくに説明して下さいました。二面性ポリマーの設計(じっくり聞かせて頂きましたが、本記事掲載時点では残念ながらその内容は秘密です)では、子供がブロック遊びをする様に楽しんで研究しているそうです。一方で、その検証には厳しい目で取り組まれている研究姿勢も聞かせて頂きました。
二面性二次元ナノシートでどんな面白い性質の物質ができるのでしょうか。「世界初!二面性を持った二次元物質が完成」などというタイトルを目にするのが、今から楽しみです。
(矢崎財団技術参与 池田)

著作文献紹介
  • (1) Rigid-to-Flexible Conformational Transformation: An Efficient Route to Ring-Opening of a Trögers Base-Containing Ladder Polymer.
    F. Ishiwari, N. Takeuchi, T. Sato, H. Yamazaki, R. Osuga, J. N. Kondo, T. Fukushima
    ACS Macro Lett. 2017, 6, 775–780.
  • (2) Switching of the Conformational Flexibility of a Diazacyclooctane-Containing Ladder Polymer by Coordination and Elimination of a Lewis Acid
    F. Ishiwari, M. Ofuchi, K. Inoue, Y. Sei, T. Fukushima
    Polym. Chem. 2020, 11, 236–240.
  • (3) Selective Synthesis of Diazacyclooctane-Containing Flexible Ladder Polymers with Symmetrically or Unsymmetrically Substituted Side Chains
    K. Inoue, F. Ishiwari, T. Fukushima
    Polym. Chem. 2020, 11, 3690–3694.