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2022/11/21

Topics研究室訪問記が追記されました。

研究者の詳細

氏名 研究キーワード
三浦 智
ミウラサトシ
ロボット、ヒューマン・インタフェース、力覚提示
ホームページ https://sites.google.com/view/satoshi-miura
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2021年度 奨励研究助成 情報 東京工業大学 工学院機械系 PDF PDF
研究題名 ロコモーティブロボット用ハプティックデバイスの知的制御

訪問記

最終更新日 : 2022/11/21

訪問日:2022/10/27
訪問時の所属機関 東京工業大学 工学院機械系 訪問時の役職 講師

オンラインインタビュー(図1)で、助成対象テーマの内容や研究に対する考え方などをお伺いしました。

先生の研究を簡単に説明してください。
私は人の認知モデルに柔軟に適応するAI制御の構築を行っております。特徴的な点としては、人間とロボットの構造的な違いをどのように埋めるかというインタフェースの研究で、操作を要するすべてのロボットにそれを適応することを目指しています。

先生の研究の独自性は何ですか。
私がターゲットにしているのは、視点が一緒に移動する移動ロボット、例えば、車、ショベルカーや内視鏡、ドローン等となります。これらのロボットは、複雑な現場環境に適応可能というメリットがありますが、人の体とは異なる構造や形態をしている場合が多いため、「身体性の違い」と呼ばれる課題が発生します。これは、人が自分の体とは異なる形態をしているロボットを動かす場合、直感的な操作が困難になるというものです。
多くのロボットがキーボード、ジョイコンなどで操作されますが、「身体性の違い」を補償するインタフェースは未確立です。そこで、ロボットを直感的に操作可能にするインタフェースの開発に取り組んでいます。

助成研究の内容を教えてください
助成研究では、人の認知モデルに柔軟に適応するAI制御の構築を行います。そのため、認知制御に関する3つの課題に取り組みます。
1つ目は入力量に応じた力覚フィードバックがわかりにくいという課題です。入力量に対し、どのような力覚フィードバックを返すべきかという力覚フィードバックのモデルを明らかにしていきます。そして、新しいインタフェースを開発して、人の入力量に対して適切な力覚を返すシステムを開発します(図2 新しいインタフェース)。
2つ目は各自由度の入力が干渉しやすいという課題です。ドローンを用いて、XYZ、Yaw軸の4自由度で入力の干渉を検証すると、Z軸(重力)方向と、Yaw軸(手首の回転)方向で意図しない入力が入りやすいことがわかりました。そこで機械学習を用いて適切な入力だけを抽出できるように、ニューラル・ネットワークの一種であるLSTM (Long Short Term Memory)と呼ばれるアルゴリズムを用いて学習させ、学習の効率が良い条件を検討しています。現在は、実際にドローンを直視できない視野外飛行(ドローンが搭載したカメラだけで操作をする飛行条件)で、従来と比べ、飛行時間が短縮できることがわかりました。
3つ目は、利き手、非利き手により操作に差が発生するということです。これには、油圧ショベルを研究対象として、利き手、非利き手の協調制御の検討を行っています。油圧ショベルには、多くの自由度があり、それを4本のレバーで操作するため、不慣れな人には操作が難しく、両手を使うことのメリットがあると考えています。我々は、この油圧ショベルをVR(Virtual Reality)技術でモデル化して、両手の協調制御を効率的に動作させる最適制御手法の検討のため、評価に必要な変数を求める実験を行い、利き手と非利き手での違いを明らかにしながら検討をしています。

研究者を目指したきっかけとどのような研究者を目指すかを教えてください。
父が大学の教員であったため、学生の頃から研究者を意識していました。そして、自分のアイデンティティを意識したのが高校生のときで、わからないことを明らかにしたり、文章として残したりすることが好きなので、研究者は天職であると思うようになりました。今は、論文を書く時間をどのように確保するかが課題となっていますが、論文にしないと、研究をしていないのと同じなので、日々時間の確保に頭を悩ましながら、論文作成を行っています。
目指す研究者像は年齢により異なると思いますが、若手のうちは自分で多くの論文を書くこと、年齢を重ねても、1本でもよいので自分で論文を書いて査読などで他の研究者と議論をしていきたいと思います。そして、年を重ねても自分で論文を書く研究者でありたいと思っています。
研究の面白さと研究者として大事なことを教えてください。
研究の面白さは、仮説が当たった時はもちろんですが、逆にセレンティビティのような、予期しないような偶発的な発見があった時にも感じます。また、人の研究を聞いて、いろいろな新しい着想を考えるのも面白いです。
研究者にとって一番大事なことは、やりたいことがあるということで、やりたいことがなくなったら、非常につらいと感じると思います。例えば、原理的には昔と大して変わらずに、装置などのパフォーマンスが上がっただけだとしても、感動できて、そこから次にやりたいことが生まれるかが重要だと思います。

後記
すでに社会には様々なロボットが使われていますが、特殊な環境下で、遠隔操作が必要なロボットでは、我々の知らない未知の課題があることが分かりました。今後、先生の研究成果が、海洋、宇宙、災害現場など、特殊環境下で活用され、社会に役立つものとなることが期待できるインタビューでした。ありがとうございました。
(矢崎財団常務理事 砂山竜男)