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2017/11/21

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研究者の詳細

氏名 研究キーワード
寺尾 潤
テラオジュン
機能性高分子、分子ワイヤ、導電性ポリマー、分子エレクトロニクス・ナノテクノロジー、有機デバイス、分子素子、ナノデバイス、ロタキサン、分子配線、分子センサ・クロスカップリング反応
ホームページ http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/terao/
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2022年度 学術賞表彰 功績賞 東京大学 大学院総合文化研究科 PDF
研究題名 機能性高分子ワイヤの合成を基軸とする高分子デバイスの作製
2016年度 一般研究助成 新材料 京都大学 大学院 工学研究科 物質エネルギー化学専攻 PDF PDF
研究題名 機能性高分子ワイヤの合成を基軸とする高分子デバイスの作製

訪問記

最終更新日 : 2017/11/28

訪問日:2017/09/15
訪問時の所属機関 東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 訪問時の役職 教授

研究紹介文にもとづき、助成対象となったご研究の詳細を伺いました(図1)。以下は主な質疑応答です。


ご研究を始めた契機はなんですか?
化学分野はこれまで『量』を主眼に置いた発展の道を歩んできました。より簡単に、より時間やコストをかけずに、より多く目的に合う材料を手に入れる。例えば医薬品は6割の患者さんに効けばよいとされています。もっとも大量に作ることができるので、価格は安い。さらに多くの患者さんに効くようにするには、より高度に薬をデザインしなければなりません。しかしそれでは高価になりすぎてしまって買うことができません。この状況を変えるにはどうしたらいいのか。『量』にこだわった化学はいつしか限界がきます。そこで、化学分野における『量』の常識にとらわれることなく、発想を転換し、1分子の『質』を上げるには何をすべきかを考えたのが、この研究の発端です。


ご研究の独創性を改めてお伺いします
1分子の『質』にこだわり、1分子で機能するセンサを考案しました(図2)。シリコン半導体の世界はすでに加工限界に到達しているという見方が一般的です。そこで物質の最小単位である分子を組み上げて、分子のみの電子回路を合成すれば、ナノメートルスケールの分子素子が安価に大量に作製できると考えています。合成化学的手法による電子回路作製研究は他に類がなく、私の研究の独創的な点であるといえます。研究者を志したきっかけを教えてください博士課程でテーマをうまく作ることができ、米国化学会誌に論文掲載されたことが大きいです。このことは、化学研究の世界において大変光栄なことで、これをきっかけに研究の面白さが増し、研究者の道を歩むことになりました。


研究活動の面白さは何ですか?
新しいものを発見したときの感動、興奮は何物にも変えがたい面白さがあります。また、その感動、興奮を一緒にゴールを目指している人たちと共有することの喜びもひとしおです。自らの考えていたことがうまくいったときの嬉しさは格別ですが、うまくいかなくても、思いがけない発見があるという面白さがあります。


後進の方に伝えたいことは何ですか?
高みを目指すことが大切だと思います。野球にたとえれば、ヒットを打ち、その感動に甘んじることなく、さらにホームランを目指すということかと思いますヒットに満足していては、ヒットしか打てなくなると思います。ホームランを打ったときの感覚はホームランを打ったことのある人にしかわかりません。ホームランの感覚を大切にしながら、次もホームランを打つという気概で取り組めば、ホームランをたくさん打てるようにな
ると思います。


後記
いろいろな大学で研究の道を歩まれてきた寺尾先生からは、研究の楽しさをたくさん語っていただきました。所属を変わられるたびに視野が広がり、価値観も変わるとおっしゃっていました。一方で新しいものを見つけた時の感動には変わりがないとの言葉もいただきました。興奮して眠れず、朝が待ち遠しいという時もあるそうです。そういった気持ちをまた味わいたいという気持ち、またそれを周りの人とも味わいたいから、研究を続けられるということです。寺尾先生のご研究が早期に実ることを期待しています。
(技術部長 鳥越昭彦)

著作文献紹介
  • “A Typical Metal Ion-Responsive Color-Tunable Emitting Insulated –Conjugated Polymer Film”, Angew. Chem. Int. Ed., 55, 13427-13431 (2016). 
  • “Enhancement of Phosphorescence and Unimolecular Behavior in the Solid State by Perfect Insulation of Platinum–Acetylide Polymers”, Terao, J. et. al. J. Am. Chem. Soc., 136, 14714–14717 (2014).
  • “Synthesis of One–Dimensional Metal–Containing Insulated Molecular Wire with Versatile Properties Directed toward Molecular Electronics Materials”, Terao, J. et. al. J. Am. Chem. Soc., 136, 1742–1745 (2014).
  • “Design Principle for Increasing Charge Mobility of –Conjugated Polymers Using Regularly Localized Molecular Orbitals”, Terao, J. et. al. Nature Commun., 4, 1691 (2013).
  • “Synthesis of Organic–Soluble Conjugated Polyrotaxanes by Polymerization of Linked Rotaxanes”, Terao, J. et. al. J. Am. Chem. Soc., 131, 16004–16005 (2009). 
  • Insulated Molecular Wire with Highly Conductive  –Conjugated Polymer Core”, Terao, J. et. al. J. Am. Chem. Soc., 131, 18046–18047 (2009).