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2021/09/02

Topics研究室訪問記が追記されました。

研究者の詳細

氏名 研究キーワード
土肥 侑也
ドイユウヤ
固体高分子電解質、ポリエチレンカーボネート、イオン伝導、高分子物性、粘弾性、誘電緩和、中性子散乱
ホームページ http://rheology.jp/nagoya/employees/yuya-doi/
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2020年度 奨励研究助成 エネルギー 名古屋大学 大学院工学研究科・物質科学専攻・レオロジー物理工学研究グループ PDF
研究題名 新規固体高分子電解質の調製とそのイオン伝導機構解明

訪問記

最終更新日 : 2021/09/02

訪問日:2021/08/23
訪問時の所属機関 名古屋大学 大学院工学研究科 訪問時の役職 助教

オンラインインタビュー(図1)で、助成対象テーマの内容や研究に対する考え方などをお伺いしました。

先生の研究を簡単に説明してください。
私は、Liイオン電池に使われる固体高分子(電解質)の基礎物性研究を行っています。現在のLiイオン電池の電解質には低分子の有機溶媒が使われていますが、液漏れや発火という問題が発生します。この有機溶媒を固体高分子材料に置き換えることで、これらの課題が解決できます。しかし、このようなコンセプトは50年ほど前からありましたが、高分子材料の特性が悪く、十分に実用化されていません。
高分子電解質として、最もよく使われているのがPEO(Poly Ethylene Oxide)です。PEOは高温ではLiイオンの伝導度が高いですが、室温では伝導度が低下することが課題でした。そこで、PEOにかわる材料として、PEC(Poly Ethylene Carbonate)に着目しました。EC(Ethylene Carbonate)は現在のLiイオン電池に使われている電解質で、Li塩がよく溶けて、Liイオンの伝導度も高い材料です。これを高分子化させたものがPECとなります
このPECは、分子が動きやすく、それに伴ってLiイオンの伝導度が高いことがわかっています。しかし、どのようにリチウムイオンと高分子が相互作用して、どの分子運動がそのイオン伝導に強く影響しているのかがわかりません。そこで、私の得意とする高分子基礎物性の観点から、この研究に取り組んでいます。
現在は、高分子にリチウム塩をまぜたサンプルに様々な交流電場をかける誘電緩和測定を行っています。この測定では、モノマー数個単位のセグメントの緩和時間(α緩和)と、もっと小さな局所部の緩和時間(β緩和)を測定することができます(図2参照)。リチウム塩を加えるとα緩和時間は、1桁、2桁のレベルで、遅くなり、局所部のβ緩和時間はリチウム塩濃度により、遅くなる場合と早くなる場合があることがわかりました。このように、分子の観測サイズによりリチウム塩の影響も異なることがわかっています。

この研究のきっかけを教えてください。
2019年の7月から機会があってドイツのユーリッヒ総合研究機構という研究所で研究員になりました。9か月という短い期間でしたが、サンプルの合成法や中性子散乱による解析など、今までやってきたこととは違う経験をすることができました。特に中性子散乱は世界中で限られた場所でしかできないものでしたが、この測定により分子構造の情報が見える可能性があることまで確認ができました。
この研究を日本に戻ってきても継続しており、今回の研究助成テーマはこの時の研究内容に関連したものとなります。

ドイツに行った時の経緯などを聞かせてください
博士課程を卒業した時に、海外で研究を行いたいと思いました。これは、学生時代に3ヶ月だけですが、アメリカに行ったことがすごく刺激になったことによります。言葉が違うだけで、今まで当たり前にできると思っていたことができないという、日本では得られない経験です。そして、今後の研究者として視野を広げるという意味でも、良い経験になると感じました。
その後、ドイツの研究所で直接雇っていただけいるという機会があり、きっと何か得られるものがあるのではないかと考えて、行くことを決めました。
ドイツでの研究テーマは、研究所から提案されたものです。今まですごく基礎を重視した研究をやってきましたが、Liイオン電池の高分子電解質の基礎研究で、実用化が近くゴールも見据えたものでした。このテーマは、自分では考えつかないような応用を目指した研究で、経験もないものだったので、逆に良いものとして取り組みました。

研究者になったきっかけ、研究の面白いところ、想いを教えてください
 学生時代の指導教官が研究に熱心であり、教育者として、また人としても尊敬できる人でした。また、私の研究は環状高分子の研究であり、特にそのサンプルを作ることの難しさから、世界での研究者が少ない分野の研究でした。修士2年の頃に結果が出始めたこともあり、研究がすごく面白いと感じ出して、博士課程にも進みました。そして、やるのならとことん研究者としてやりたいと考え、研究者となりました。
 研究は、結果が出ないと面白くありません。学生時代には、誰もやってない研究に面白さを感じました。一方、現在は、基礎物性を研究しており、理詰めで研究のストーリーを作り、結果を予測することが、大事になるということを感じます。そして、結果が予想通りであると面白いですし、予想通りでないとますます面白いと感じています。

研究の学生に伝えたいこと
 現在の研究室では、レオロジー、高分子に限らず物質の運動をキーワードにして、学生自身が取り組む研究テーマを自分で考えて研究を進めています。これを、研究を始めたばかりの学部4年生にも求めますが、学生が考えたテーマに対し、すでに他の研究者がやっているとか、考え方が変とか指摘して、学生も研究が苦しいと感じることがあると思います。しかし、やっていく中で楽しいこと、自分が面白いなって思えることを目指して研究を行って欲しいと思います。
研究はつらいこともありますが、面白いこともあるということを知ってほしいと思います。

後記
先生の博士課程では化学系の研究(環状高分子の合成)を行い、現在所属しているのは物理系の研究室(高分子の基礎物性)ということで、先生の話では、その取組の分かりやすく教えてくれました。研究者として研究の視野を広げるのは、海外での研究体験もそうですが、いくつもの得意な研究分野を持つことも重要なことだと思います。
物理学と化学の両方の研究室で経験されたことが、先生の研究のベースとなっていると感じました。ぜひ固体高分子電解質のLiイオン電池が実用化されるよう、今後の研究の進展をお祈りしております。
(矢崎財団常務理事 砂山竜男)