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研究者の詳細

氏名 研究キーワード
鈴木 亮輔
スズキリョウスケ
熱電変換、熱電素子、熱電モジュール、熱流体、輻射熱利用、水レンズ、鉄バナジウムアルミ、溶融塩化カルシウム、チタン製錬、二酸化炭素削減
ホームページ http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/ecopro/rosuzuki/
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2002年度 特定研究助成 京都大学大学院 エネルギー科学研究科
研究題名 熱電発電素子の最適配置による出力最大化

訪問記

最終更新日 : 2014/08/12

訪問日:2014/08/05
訪問時の所属機関 北海道大学 エコプロセス工学研究室  訪問時の役職 教授

北海道大学・鈴木亮輔先生を訪ねて
2005年1月に当時在職されていました京都大学に特定研究助成のヒアリングに伺って以来の訪問でした。特定研究の内容は、大規模発電所の排熱を回収、発電することを目的に出力を最大化させるために、熱媒体の流体力学・熱伝達特性を考慮した発電パネルの構造、その配置の研究と、高耐熱性・低コストである鉄基合金(Fe2VAl)を開発するものでした。先生は元々非鉄金属の専門家であり、現在はチタンの製造と熱電発電を研究の柱に置いているとのことです。今回その熱電発電の話を詳しく聞くことができました。 
 熱電発電の研究の大概は発電素子そのものの特性向上ですが、先生は材料出身ながら、熱交換まで含めたシステムを研究しています。そのきっかけは財団の特定研究だったそうです。熱電変換は、素子の効率(ZT)と最終効率が大きく乖離しています。素子効率からモジュール、そしてシステムと効率は大きく低下しますが、具体的にその辺りの実際と改善法に就いてお聞きました。特に出力値は温度差の2乗に比例することから温度差確保の重要性を強調されました。
 p型、n型半導体素子の長さ、その間隔によって出力、効率がどう変わるかを説明いただき、出力と効率の最適値が存在することが分かりました。また、1ヶの素子では発電量が小さいので、多数の素子を直列接続、それらを並列に接続したモジュール、あるいは高温側、低温側と異なる素子を使う積層型(カスケードモジュール)などが必要で、素子配列法、高温側熱媒、低温側熱媒の流し方により、各素子の温度勾配が異なります。熱交換器のタイプに、プレートフィン型、多重管型などがあるように、最大限の出力を得るためには素子の配置、熱媒の流し方に工夫が必要です。配置法で、熱交換とは異なる点は、素子が大変高価であること、温度分布により電位分布、電流分布が生じ、出力、電力量が変化することです。当日は具体的にシュミレーション、実測結果をもとに、モジュール/システム設計の重要性を聞くことができました。
 熱電素子の応用例として、船のエンジンの排熱利用、製鉄所の連続鋳造設備でスラブ(圧延用半製品鋼塊)から放出されるふく射熱の利用、直接熱電変換素子に集光する太陽熱発電の例を挙げられました。輻射熱利用の場合、素子に電流が流れるとペルチェ効果により温度差が小さくなることから、出力を上げるには外部抵抗値を上げる工夫が重要とのことです。経済性を考えると、温度差が150℃以上、250℃以上の排熱源が必要で、現状ではなかなかその熱源を見出せないそうです。ユニークな水レンズは、農業用塩ビシートに水をため、シート張力で太陽光の焦点調整するものでした。
 夢を追う先生の挑戦は、先生のライフワークでもある酸化チタンの直接還元法である溶融塩電解の研究で、これは小野先生と鈴木先生の名前を冠してOS(Ono-Suzuki)法として知られています。更には高温二酸化炭素の溶融塩電解還元によるナノ炭素の製造、あるいはアルミニウムのアノード酸化によるナノ構造体であるナノポーラスアルミナ被覆などに及んでいます。これらは熱電素子で得られた直流電源の利用として結びつきます。
 素材の研究から、低コスト・低環境負荷のエコプロセスの研究への展開、大いに期待したいと思います。
(2014年8月5日訪問、技術参与・飯塚)